3/29(金)NHK-FM「カブキ・チューン」春の特番「桜らんまんスペシャル」にゲストで出演します。MCは歌舞伎俳優の中村莟玉さんと、芸人の大久保佳代子さん。
演目「藤娘」を現代語訳して朗読いたします。ぜひお聞きくださいませ。

【出演】中村莟玉、大久保佳代子、山﨑徹(附け打ち)、 菅原敏(詩人)

藤娘(超訳)

若紫に十返りの 花をあらはす松の藤浪
人目せき笠塗笠しゃんと 振りかたげたる一枝は
紫深き水道の水に 染めてうれしきゆかりの色の
いとしと書いて藤の花 エエ しょんがいな
裾もほらほらしどけなく 鏡山人のしがよりこの身のしがを
かへりみるめの汐なき海に娘姿の恥かしや
男心の憎いのは ほかの女子に神かけて あはづと三井のかねごとも 堅い誓ひの石山に 身は空蝉の から崎や まつ夜をよそに 比良の雪 とけて逢瀬の あだ妬ましい ようもの瀬田にわしゃ乗せられて
文も堅田のかた便り 心矢橋の かこちごと

―――――――――

百年に一度の恋なのかしら 松の花のふりをして
鮮やかな緑に寄り添う私は 髪なびかせた藤の花
あなたの枝葉がちくちくと 私の心を刺すのです

黒い帽子をまぶかにかぶり 胸 掻き抱く藤の花
東京の 夜の水面(みなも)に染められて
香り立つのは深いむらさき

ねえ、知ってる「いとし」という意味
「い」と言う字を縦に十(とう)書いて
その真ん中を「し」という字で貫いて
長くすーっと書いてみて
ほら藤の花みたいに見えるでしょう

ばかみたいね私たち
スカートの裾 押さえて笑う風の中
誰かのことを責めるより
鏡の中の自分の弱さを見つめたいけど

ほんとは私 知っている
男はみんな嘘つきで いつも誰かを探してる
他の人には会わないと かたく誓ったはずなのに
私の心は空っぽで ひとり待つ夜にひらひらと雪
あなたは誰かと溶け合って 時計の針も気にしない
あなたの嘘に舞い上がり 出した手紙に返事もなくて
心乱れて泣き濡れて 私の小舟は流されて
向こう岸へは 渡れない